耳の形
彼は愛されていなかった。つけてもつけてもポロポロこぼれていく。「こんなのやってられない!」と当たり散らした。彼の耳に装着したAirPodsはことごとく外れて落ちていく。ほとんどの人にとって快適で取り外しが簡単なフルワイヤレスイヤフォンだが、彼の耳には全く合わない。AirPodsに愛されていないのだ。
今度は愛してもらえると思った。同じような境遇の人たちは少なからずいる。滑りにくく表面加工をするとか、耳にフィットするようなカバーをつけても充電できるようにするとか、やり方はいくらでもあったはずだ。しかし、Appleはそうしなかった。第2世代のAirPodsも同じ形、同じ素材。ケースも、左右の本体も、第1世代と比べてまったく見分けがつかない。当然ながら彼の耳には合わない。