Sonyのポケットラジオに飛びついたのはティーンズたちだ。
彼らはずっと、自分だけのラジオが欲しくてたまらなかった。一人で、どうしても聴きたい音楽があった。ロックンロールだ。だが、居間にデンと構える真空館ラジオではロックンロールは聴きたくても聴けなかった。親が嫌ったからである。
Sonyのトランジスタラジオは、ロックンロールを聴きたいティーンズにとって、救世主のような製品だったのだ。
ラジオから流れるロックを渇望するティーンズ。ラジオを買えなかった彼ら非消費者を、消費者に変えた「新市場型の破壊的イノヴェーション」。それが井深のトランジスタ・ラジオだった。
Sonyのトランジスタ・ラジオはハードウェアの側面からロックンロールの時代を開き、レコード産業の黄金時代を演出した。